マクヴィティとジャファケーキの歴史(3)「ジャファケーキ事変」前篇

マクヴィティとジャファケーキの歴史について、

マクヴィティとジャファケーキの歴史(1)「マクヴィティ下剋上」篇
マクヴィティとジャファケーキの歴史(2)「ジャファケーキ生誕」篇

と書いてきましたが、今回は1991年に生じた「ジャファケーキの変」、すなわちジャファケーキはケーキなのかビスケットなのか問題に入りたいと思います。

まずそのためには、イギリスの付加価値税(VAT)*1という、日本の消費税に相当するものについて少しお話ししないといけません。

日本の消費税は現在8%で、これを10%にすると今の政権では言っていますが、そのなかで軽減税率という言葉が聞かれるようになりました。

改めて説明するまでもありませんが、消費税は10%にするんだけど、食料品などの生活必需品にかかる税金は税率8%に据え置いてもいいのではないかということです。

少し考えてみると分かるのですが、いざ軽減税率を導入するとなると、このようなもの(日本経済新聞)やこのようなもの(NHK)など、どこで線引きをするかという問題が出てきます。

食料品が生活に必要不可欠だということは分かるけれども、外食などはサービスも入るので、対象から外していいのではないかというようなことです。

でも、これは個々人の生活様式などによっても大きく変わってくるので、決めるのはとても難しい。

例えば公共性の高い学食や病院の食堂なんかはどうなるのか、でも学食でも贅沢めなメニューとかもあるし、学食によっても違うし……
なんてことですね。

すでに実施している地域での有名な例としては、カナダのドーナツ屋さんがあります(笑)*2

カナダでは基本的に食品の購入では付加価値税が免除されるのですが、外食は標準的な税率(6%)がかかります。

さて、ドーナツは「食品」なのか、はたまた「外食」なのか?

とりあえず、考え方としてはイートインするか、テイクアウトするかで分けようということにしたようです。

でもドーナツだと判断がつきにくい……

というわけで、カナダでは「(実際にそうするかどうかはいちいち判断してられないので)すぐ消費することに適しているか」という判断基準を作っています。

その結果、ドーナツは6個以上なら「その場での消費に適していない(いくらなんでもその場じゃ食べきれないでしょ)」と見なされて税金がかからず、5個までだときっちり標準税率の8%がかかる、ということになったのです。*3

ドーナツをお店で5個食べちゃうのは適切な行為みたいです(笑)

さあ、ここまで来るとお分かりかと思うのですが、イギリスではなんと、ケーキでは付加価値税免除、チョコレートのかかったビスケットではきっちり標準税率がかかるということになっているのです!

ちなみにビスケットだけなら免除、チョコレートが「入った」ビスケットなら免除ということになっていてわけがわかりません!

そしてイギリスの付加価値税の税率は20%!*4

100と120じゃ大違いなので、これは揉めます。

そして、マクヴィティのジャファケーキからもがっぽり付加価値税を取りたいイギリスの歳入関税庁*5

「ジャファケーキってさあ……ビスケットじゃない?」

と吹っかけて(?)きたのです。

さあどうするマクヴィティ!

それでは今日は、ジャファケーキのテーマ曲「ブロックバスターズ」のBGMでお別れです(笑)

To be continued . . . 

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*1:Value-Added Tax

*2:カナダはドーナツ大国で、ひとり当たりの消費量は世界一です。モントリオールに行ったときに、カナダの国民的ドーナツチェーン店のティム・ホートンズ(Tim Hortons)で食べました。おいしかった〜。

*3:こちらの財務省税制メールマガジンをご覧ください。

*4:「ジャファケーキ事変」が起きた1991年時点では、税率が15%から17.5%に上がったばかりのところでした。

*5:HMRC; Her Majesty’s Revenue and Customs